令和3年民法・不動産登記法等改正と相続法(1)

令和3年に改正された民法・不動産登記法等は、このページを作成しました令和3年6月時点では未だ施行されておりません。今後、数回に亘り、改正された民法・不動産登記法等のうち相続法に関わる分野について、解説してまいります。
以下、改正前の民法を「旧法」、改正後の民法を「新法」と略します。

1 旧法では、相続開始後、必要な場合に家庭裁判所により選任される相続財産の管理人の制度について、民法915条1項の熟慮期間中において相続人が相続の承認又は放棄をするまでの場合(918条2項)や相続放棄者が管理すべき場合(940条→918条2項を準用)等、個別に規定を設けていました。
しかし、ⅰ 共同相続人が単純承認した後、遺産分割が完了するまでの間における相続財産の管理人の制度については、規定がなく、この点が、法の欠陥といわれることもありました。また、ⅱ 相続人のあることが明らかでない場合において、相続財産を清算するための相続財産の管理人の制度はありましたが、相続財産を保全するための相続財産の管理人の制度はありませんでした。
2 新法は、相続開始後、相続人が確定し、遺産分割するまでの間において必要な場合に、「共同相続人が単純承認した後、遺産分割が完了するまでの間」又は「相続人のあることが明らかでない場合において、相続財産を保存する場合」にも相続財産の管理人を選任することができるよう規定を改めました。これに伴い、旧法918条2項は削除されました。

○ 新法897条の2(相続財産の保存)
1項 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2項 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

3 新法897条の2第1項の相続財産の管理人の職務の内容や権限について不在者の財産の管理人についての民法27条から29条が準用されます。その結果、相続財産の管理人の職務の範囲は、原則として、相続財産の保存行為、利用行為、改良行為となりますが、例外として、家庭裁判所の許可が出れば、相続財産を処分することこもできます。但し、家庭裁判所の許可を得たうえでの相続財産の処分は、立法過程においては、相続財産の管理費用を調達するために必要かつ相当な場合と考えられおり、これが認められるのは限定的な場合と思われます。

○ 民法27条~29条、103条
27条(管理人の職務)
1項 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2項 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3項 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

28条(管理人の権限)
管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

29条(管理人の担保提供及び報酬)
1項  家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2項 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

103条 (権限の定めのない代理人の権限)
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

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