誰が相続人か。

                 誰が相続人か。

以下は、「民法 第5編 相続 第2章 相続人」に基づきます。

相続人 概論
1 二つの相続類型
(1)配偶者
① 常に第1順位の相続人(文献③333頁)民法890条
② 根拠
夫婦財産の清算、被相続人(特に妻)の生活保障
③ 相続分の拡大
昭和22年民法改正 1/3
昭和55年民法改正 1/2
④ 内縁の配偶者に相続権はない。

(2)血族
順位がある。民法887条・889条
第1順位 子(又はその(再)代襲者[直系卑属要件])
第2順位 直系尊属(親等の近い者が優先)
第3順位 兄弟姉妹(又はその代襲者[直系卑属要件])

2 同時存在の原則
(1)意義
相続開始時点で、相続人が存在(生存し、権利能力を有すること)していなければならない。
近代法が、一瞬たりとも、無主物となる状態を認めないことの帰結である(文献③335頁)。
(2)例外
胎児に関する例外規定 民法886条
(3)修正
代襲相続は、同時存在の原則を前提として、その結論を、相続法の理念(※)から修正するものといえる(文献③335参照)
※ 「偶然の事情による利益・不利益をできる限り避けるべし」、遺族の生活保障
(4)同時死亡の推定
〇 民法32条の2 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

(事案)AB:夫婦 C:子 D:Cの妻 E:Cの子
AとCが航空機墜落事故で即死。
ⅰ A死亡 → C死亡 の順
Aの遺産 B1/2 C1/2
→(被相続人Cの相続)D1/4、E1/4
ⅱ C死亡 → A死亡 の順
Aの遺産 B1/2
E1/2(Cを代襲してAを相続)
ⅲ A死亡<同時(推定含む)>C同時
ⅱと同じ

○ 民法第886条(相続に関する胎児の権利能力)
1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

1 権利能力の始期
出生(民法3条)
2 上記原則論を維持しつつ、例外的に胎児を保護するための特則(民法上)
① 不法行為による損害賠償請求権 民法721条
② 相続 民法886条
③ 遺贈 民法965条
3 生きて生まれることを停止条件として胎児の権利能力を認める見解(停止条件説)が判例(大判昭和7年10月6日)である。

○ 民法887条(子及びその代襲者等の相続権)
1項 被相続人の子は、相続人となる。
2項【代襲相続】
被相続人の子が、
相続の開始以前に死亡したとき、
又は第891条の規定(相続欠格)に該当し、若しくは
廃除によって、その相続権を失ったときは、
その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3項【再代襲相続】
前項の規定は、代襲者が、
相続の開始以前に死亡し、
又は第891条の規定(相続欠格)に該当し、若しくは
廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

1 被代襲者及び代襲相続人
(1)相続人が、被相続人の子[被代襲者]である場合
① 当該子の子
② ①の者について代襲原因がある場合
更に、①の者の子(再代襲)
理論的には、再々代襲もある。
(2)相続人が、被相続人の兄弟姉妹[被代襲者]である場合
① 当該兄弟姉妹の子
再代襲はない。
(3)(1)(2)とも、代襲相続人は、被相続人の直系卑属であることを要する(直系卑属要件)。

(事案)
A:養親 B:養子 C:AB間の養子縁組前に出生したBの子 D:AB間の養子縁組後に出生したBの子

B死亡 → A死亡 の順

Aを被相続人とする相続について
Cは、直系卑属要件を充たさず(民法727条)、代襲相続人となることができない。
Dは、代襲相続人となる。

〇 民法727条(縁組による親族関係の発生)
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。  

(4)代襲相続人の存在は、代襲原因が発生した時点で要求されず、相続人開始の時に充たせばよい。(文献③336頁)
2 代襲原因
① 相続開始以前の死亡
② 相続欠格による相続権の喪失
③ 廃除による相続権の喪失

相続放棄は代襲原因ではない。

〇 民法889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
1項 次に掲げる者は、第887条の規定(子、子の(再)代襲相続人)により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
1号 被相続人の直系尊属。 ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
2号 被相続人の兄弟姉妹
2項 第887条第2項(子の代襲者)の規定は、前項第2号の場合について準用する。

1項1号 被相続人に子がおらず、父と祖父がいる場合、父が相続人となる。
1項2号・2項 相続人が兄弟姉妹 代襲相続はあるが、再代襲相続はない。

〇 民法890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

<相続資格の重複>
1 考え方
相続資格が重複した場合に二重の相続資格を認めるか否かは、① 身分行為の目的、② 社会慣行、③ 被代襲者が被相続人より後に死亡した場合と比べて相続上の不利益がないか否か、等を基準に判断する。文献①p320

2 婚外子を養子にした場合
(事案)
① A(夫)・B(妻)夫婦、この夫婦の子C
② A・D女間に、子Eが出生
③ A・B夫婦とEが養子縁組(民法795条)
④ Aが死亡し、同人について相続が開始される。

Eは、非嫡出子としての地位と嫡出子としての地位を兼有してる。
(学説・実務の考え方)
嫡出子と非嫡出子は非両立であり、身分関係の重複はないので、養子(嫡出子)としてのみ相続する。文献③p340

Eが嫡出子としての地位を取得することによって、非嫡出子としての地位を喪失したと説明する。文献②p399

3 代襲者としての地位と養子としての地位の兼有
(事案)
① A(父)・B(長男)・C(二男)・D(二男の子)
② AD間 養子縁組
③ A死亡
(学説・実務の考え方)
D:Aの子の代襲者としての地位 & Aの子
二重資格を認める。
民法が本来予定している状況であり、相互に排他的な資格ではない。文献②p397、文献③p340
A死亡→C死亡の場合との比較 「偶然の事情による利益・不利益をできるだけ避けるべき」という相続法の基本理念 文献③p430

4 配偶者としての地位と養子としての地位の兼有
(事案)
① A(父)・B(長男)・C(二男)=D(二男の妻)
② AD 養子縁組(A:養親 D:養子)
③ A 死亡
④ C 死亡

Dは、Cの配偶者としての地位と、Cの養兄弟姉妹としての地位を有する。

両地位は、相互に排他的な地位ではないため、理論的には二重資格を認めてよいが、戸籍先例(昭和23年8月9日民事甲2371号民事局長回答)は、配偶者としての相続資格のみ認める。配偶者相続と血族相続が別系統のものであるという説明がされることがある(文献②p398)。

5 子としての地位と子の代襲者としての地位の兼有
(事案)
① A(父)・B(長男)・C(二男)
② BC養子縁組(B:養親 C:養子)
③ B死亡
④ A死亡

Cは、Aの実子としての地位と、Bの養子としてBの代襲相続人としての地位を有する。

3と同様の考え方から、二重資格が認められる。

○ 民法第891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
1号 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
2号 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなった者。
ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3号 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4号 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5号 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

<5号の欠格事由に関する判例>
1 自己に有利な遺言書を破棄した場合、5号の欠格事由に該当するか。
(事例)
① A(父)・B(長男)・C(二男)
② A Bに全遺産を相続させる旨の遺言
③ BがCとの関係を考慮して、②の遺言書を破棄

この場合、③のBの行為は5号の欠格事由に当たり、Bは相続人である資格を喪失するのか。

判例の考え方
○ 最判昭和56年4月3日
(事案)被相続人の自筆証書遺言が押印を欠くため無効であるところ、相続人が押印した。
(判旨)
① 5号の欠格事由の趣旨は、遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課す。
② 遺言書が方式を欠くため無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正が方式を欠くため無効である場合に、相続人が方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は、5号の遺言書の偽造・変造に当たるが、相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で行為をしたに過ぎない場合は、5号の欠格事由に当たらない。

○ 最判平成9年1月28日
① 5号の欠格事由の趣旨は、遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課す。
② 相続人が遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の行為が相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは、5号の欠格事由に該当しない。
(評価)
単に当該行為についての認識だけではなく、それによって自己が相続において有利になろうとする意思(故意)が必要である(二重の故意必要説)。

○ 民法892条(推定相続人の廃除)
1項 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、
被相続人に対し虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は
推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

※ 家事事件手続法別表第一 86の項

○ 民法893条(遺言による推定相続人の廃除)
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。

この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

〇 民法894条(推定相続人の廃除の取消し)
1項 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2項 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

※ 家事事件手続法別表第一 87の項
〇 民法895条(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)
1項 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
2項 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。
1  欠格と廃除は、いずれも、相続人としての適格を喪失させる制度であるが、次のような違いがある。

欠格:欠格事由があれば、当然に、相続人としての適格を喪失する。

廃除:廃除事由があることを、家庭裁判所が認めることが必要である。家庭裁判所が廃除を認める事例は少ないといわれている。

2 家庭裁判所が廃除を認める事例が少ない事情
① 強い効果を持つ廃除を認めることに家庭裁判所が慎重である。
② 特に遺言による廃除の場合、家庭裁判所の審理は相続開始後(被相続人の死亡後)となることもあり、推定相続人を廃除するに足りる具体的な事実を認定するだけの資料を収集することが困難な場合がある。

3 廃除肯定された例
① 和歌山家審平成16年11月30日(家月58巻6号57頁)
・ 被相続人に対し継続的に暴力を加える。
・ 被相続人に対し精神障害・人格異常があると繰り返し主張
・ 被相続人に無断で3500万円を超える貯金を払い戻した。
→ 虐待、重大な侮辱

② 釧路家北見支審平成17年1月26日(家月58巻1号105頁)
・ 末期癌で自宅療養中の被相続人に対し、療養に極めて不適切な環境を作出する。
・ 死んでも構わない等と言う。
→ 虐待に当たる。

③ 大阪高決令和元年8月21日(判例タイムズ1474号19頁)
遺言による廃除の事案

・ 当時60歳を優に超えていた被相続人に対する暴力が少なくとも3回
・ そのうち1回は、全治約3週間を要する両側肋骨骨折、左外傷性気胸、このため5日の入院治療という極めて重大な結果
→ 虐待、著しい非行

【参考・参照文献】

以下の文献を参考・参照して作成しました。
① 二宮周平 家族法(第5版)(2019年、新世社)312頁~
② 窪田充見 家族法(第4版)(2019年、有斐閣)374頁~
③ 内田貴 民法Ⅳ[補訂版]親族・相続(2004年、東京大学出版会) 332頁~

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