遺留分とは何か、どのようにして遺留分侵害額を計算するのか。

遺留分とは何か、どのようにして遺留分侵害額を計算するのか。

第5編 相続 第9章 遺留分
平成30年改正前の相続法を「旧法」、同改正に係る相続法を「新法」という。

1 遺留分制度の意義
兄弟姉妹以外の相続人について、その生活保障を図る等の観点から、被相続人の意思にかかわらず、被相続人の財産から、その相続人の最低限の取り分を確保する制度である。(文献④133頁)
2 遺留分に関する権利の法的性質
旧法:形成権&物権的効果(旧法下の判例)
新法:形成権&金銭債権化

旧法では、遺留分に関する権利を行使した効果は、物権的効果とされていた。すなわち、遺留分権利者が遺留分に関する権利を行使することにより、遺贈・贈与等の一部が無効となり、遺産が遺留分権利者と受遺者等の共有となる。
そうすると、遺留分権者と受遺者等との間で遺産の共有関係の解消をめぐって紛争となる、また、遺贈等の目的が事業用財産である場合は、円滑な事業承継に支障が生ずるおそれがある。
遺留分権利者の生活保障や遺産形成に関する清算という遺留分制度の目的を達成するためには共有とすることまで必要でない。
そこで、新法は、物権的効果を否定し、遺留分権利者が遺留分に関する権利を行使することにより金銭債権が発生するという効果を採用した。これにあわせて、「減殺」という文言は使用しないで、「侵害」に改めた。
3 経過措置
2019年(令和元年)7月1日以後に開始した相続については新法が適用され、同日前に開始した相続については旧法が適用される。(附則1条、2条)

〇 民法1042条(遺留分の帰属及びその割合)(平成30年改正)
1項 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2項 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

1項 総体的遺留分の割合
2項 個別的遺留分の割合
総体的遺留分の割合 × 法定相続分(※)

※ 902条に言及せず→相続分指定の有無は個別的遺留分の割合に影響しない。

[新法・旧法の対応関係]
旧1028条→新1042条

□ 旧1028条(遺留分の帰属及びその割合
1項 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合   被相続人の財産の二分の一
2項 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

□ 旧1044条(代襲相続及び相続分の規定の準用)(平成30年改正により削除)
第887条第2項及び第3項、第900条、第901条、第903条並びに第904条の規定は、遺留分について準用する。

〇 民法1043条(遺留分を算定するための財産の価額)(平成30年改正)
1項 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2項 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

1 遺留分を算定するための財産の価格(本条1項)は、旧1029条1項から実質的な変更はない。
[新法・旧法の対応関係]旧1029条2項→新1043条2項

2 遺留分=物権的効力の否定&金銭債権化→旧1032条の削除

□ 旧1029条(遺留分の算定)
1項 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
2項 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

□ 旧1032条(条件付権利等の贈与又は遺贈の一部の減殺)(平成30年改正により削除)
条件付きの権利又は存続期間の不確実な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第1029条第2項の規定により定めた価格に従い、直ちにその残部の価格を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。

〇 民法1044条(平成30年改正)
1項 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。(旧1030条1項)
2項 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。(新設)
3項 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。(新設)

□ 旧1030条
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

□ 旧1044条(代襲相続及び相続分の規定の準用)

1 [新法・旧法の対応関係]旧1030条→新1044条項
2 新1044条2項(新設)
内容は旧904条と同じであり、同条を準用していた旧1044条が削除されたことによる。
3 旧法下の判例との比較
(1)旧法下の判例(最判平成10年3月24日)
① 非相続人に対する贈与
旧1030条が適用される。相続開始前1年間(原則)
② 相続人に対する贈与
旧1044条→<準用>旧903条
ⅰ 相続開始日前〇年間という限定はない。
ⅱ 単なる贈与ではなく、特別受益に当たる贈与に限る。
(2)新法
① 非相続人に対する贈与
新1044条1項が適用される。相続開始前1年間(原則)
② 相続人に対する贈与
旧1044条削除、新1044条3項
ⅰ 相続開始前10年間に限定される。
受遺者・受贈者がその存在を知り得ない、相続開始よりかなり前の贈与であってもカウントされるとなると、減殺請求を受ける範囲が予想外に大きくなり、受遺者・受贈者が不測の損害を被る。
受遺者等の法的安定性と相続人間の実質的公平(平成10年判例が相続人の特別受益について旧1030条の適用を否定した実質的根拠)という相反する2つの要請を調和して、相続開始前10年間に限定した。(文献④136頁)
ⅱ 単なる贈与ではなく、特別受益に当たる贈与に限る。
相続開始前1年間の贈与であっても、単なる贈与ではなく、特別受益に当たる贈与のみがカウントされる。

〇 民法1045条(平成30年改正)
1項 負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2項 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。

□ 旧1038条
負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除ししたものについて、その減殺を請求することができる。

□ 旧1039条
不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。

1 「負担付贈与」と「遺留分算定の基礎財産の参入」(新1045条1項)
旧1038条は、負担付贈与を遺留分算定の基礎となる財産に参入するについて、贈与全額を算入する考え方(全部参入説)と負担を控除した後の一部を参入する考え方(一部参入説)があった。新法は、一部参入説を採用した。
2 「不相当対価による有償行為」と「遺留分算定の基礎財産の参入」(新1045条2項)

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたもの
旧1039条   贈与+償還
新1045条2項 負担付贈与+償還せず
←遺留分=物権的効力の否定&金銭債権化であれば、新法の取扱いが合理的である。

〇 民法1046条(遺留分侵害額の請求)(平成30年改正により新設)
1項 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2項 遺留分侵害額は、第1042条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条第1項に規定する贈与の価額
二 第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

□ 旧1031条(遺贈又は贈与の減殺請求)
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。(平成30年改正により削除)

□ 旧1036条(受贈者による果実の返還)
受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならない。(平成30年改正により削除)※ 新1046条2項

1 遺留分の物権的効力を否定し金銭債権化、遺留分侵害額の計算方法を規定した。これにより、遺留分権利者の侵害者に対する侵害額に相当する金銭債権が発生するだけであり(具体的な請求権は権利行使をして初めて発生すると考えられている。)、遺留分権利者が遺留分に係る権利を行使しても、遺産が共有状態とはならない。

2 請求権の相手方
① 受遺者
② ①には、特定財産承継遺言(民法1014条2項)により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人も含まれる。
③ 受贈者

3 遺留分権利者の意思表示
理論的には、下記①②に区分される。
① 遺留分侵害額請求権(形成権)の行使
② ①により生ずる金銭債権の履行請求

②の請求権は、期限の定めのない債務(民法412条3項)であり、請求時点で履行遅滞となる。①と②をあわせて行う場合は、その時点から金銭債務は履行遅滞となる。

4 遺留分侵害額の計算方法(本条2項)
後記【遺留分侵害額の計算方法】

5 遺留分に係る権利行使の物権的効力を前提とした旧法の規定が削除等整備された。

【遺留分侵害額の計算方法】
(1)旧法
判例(最高裁平成8年11月26日等)は、次のとおりであった。※1,2

A 被相続人が相続開始時に有していた財産全体の価格
B 被相続人が贈与した財産の価格
C 債務の全額
D 個別的遺留分の割合
(総体的遺留分率×法定相続分率)
E 遺留分権利者が得た特別受益
F 遺留分権利者が相続によって得た財産
G 遺留分権利者が負担すべき相続債務

(A+B-C)×D-E-F+G

※1 遺留分額の計算 (A+B-C)×D-Eまで
※2 遺留分侵害額の計算 遺留分額-F+G

(2)新法
基本的には、旧法の判例の考え方を法文化したものである。

平成8年判例は、厳密には、遺留分権利者の特別受益の取扱が新法1046条2項の規律とは異なるが、・・・新法は、この特別受益の額についても、遺留分「侵害額」の算定の中で取り扱うこととした。(文献④134頁)

① 遺留分を算定するための財産の価格
新法1043条1項
【A】被相続人が相続開始時に有した財産の価格
+ 【B】贈与した財産の価格 ※1
- 【C】債務の全額

※1 参入される贈与について(新1044条)
a 受贈者が相続人以外の者(1項)
相続開始前1年間(原則) 例外:1項後段
b 受贈者が相続人(2項)
相続開始前10年間にした婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価格(特別受益に当たるもの)

② 個別的遺留分の割合【D】
ⅰ 総体的遺留分率(割合) 新1042条1項
ⅱ 法定相続分率(割合)  新1042条2項
【計算式】ⅰ×ⅱ

③ 遺留分侵害額算出における控除(新1046条2項)
a 遺留分権利者が受けた遺贈又は特別受益額(1号)【E】
こでいう特別受益額は、相続開始前〇年間という時間的制限は設けられていない。
b 遺留分権利者が相続により取得すべき遺産額(2号)【F】
寄与分(民法904条の2)を考慮していない。←遺留分額侵害請求の事物管轄と遺産分割の事物管轄が異なる/寄与分を定めることは家庭裁判所の専権に属する。(文献⑤455頁)

④ 遺留分侵害額算出における加算
遺留分権利者が承継する債務額 (3号)【G】
遺留分の額は、遺留分権利者が最終的に確保できる額を意味するため、遺留分権利者が被相続人の債務を相続により承継した場合には、その債務の額を加算する。

以上を踏まえて、次のとおりとなる。
【計算式】

(①遺留分を算定するための財産の価格×②個別的遺留分の割合)-③遺留分侵害額算出における控除+④遺留分侵害額算出における加算

〇 民法1047条(受遺者又は受贈者の負担額)(平成30年改正により新設)
1項 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。
ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
2項 第904条、第1043条第2項及び第1045条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
3項 前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。
この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
4項 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5項 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

□ 旧1033条(贈与と遺贈の減殺の順序)
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。(平成30年改正により削除)※ 新1047条1項1号

□ 旧1034条(遺贈の減殺の割合)
遺贈は、その目的の価格の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。(平成30年改正により削除)
※ 新1047条1項2号

□ 旧1035条(贈与の減殺の順序)
贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。(平成30年改正により削除)※ 新1047条1項3号

□ 旧1037条(受贈者の無資力による損失の負担)
減殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。(平成30年改正により削除)※ 新1047条4項

1 新10471項
複数の遺贈・贈与がある場合、遺留分侵害額の負担割合を定めものである。
【1号】 受遺者=先、受贈者=後 ※旧1033条
【2号】
① 受遺者複数
目的の価格の割合に応じて負担 ※旧1034条本文
② 同時受贈者複数
目的の価格の割合に応じて負担 新設
③ ①②とも、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、
その意思に従う。※旧1034ただし書(遺贈)
【3号】
異時受贈者複数
後の贈与>前の贈与 ※旧1035条

2 遺贈
特定財産承継遺言(新1014条2項)による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む(新1047条1項( )書)。これは、改正前の一般的な理解を明文化したものである。

3 受遺者・受贈者も遺留分権利者である場合
A(遺留分権利者)→B(受遺者・受贈者&遺留分権利者)
目的の価格=遺贈・贈与の目的の価格-Bの遺留分=遺留分侵害額
(新1047条1項( )記)

これは、判例(最判平成10年2月26日)の見解を明文化したものである。

4 民法904条の準用(新1047条2項)
○ 新904条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

同条を準用していた旧1044条が削除されたため、規定された。

① 新1047条2項による新904条の準用
受贈者の負担額を算定するため
② 新1044条2項による新904条の準用
遺留分額を算定するため

5 新1043条2項の準用(新1047条2項)
○ 新1043条(遺留分を算定するための財産の価額)
1項 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2項 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

受遺者・受贈者の負担額を算定するについて、準用される。

6 新1045条の準用(新1047条2項)
○ 新1045条
1項 負担付贈与がされた場合における第1043条第1項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2項 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。

受贈者の負担額を算定するについて、準用される。

7 遺留分権利者承継債務の消滅行為(新1047条3項)
遺留分権利者承継債務
「被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務」(新1046条2項3号)
A(遺留分権利者)→B(受遺者・受贈者)
α=遺留分権利者承継債務
Bがαを弁済等して消滅させる。
A→B 遺留分侵害請求権行使

B→A αの限度において、消滅させる。(防御的機能)(本条3項前段)
この場合、B→Aのαに関する求償権は消滅する。(本条3項後段)

8 受遺者・受贈者の無資力の負担(新1047条4項)
旧1037条と趣旨は同じ。

9 裁判所の受遺者・受贈者に対する相当期限の許与(新1047条5項)
(1)新法は、遺留分に係る権利を全て金銭債権化した。しかるに、例えば被相続人から承継した財産が換価困難な財産である場合、受遺者・受贈者が遺留分権利者に対し直ちに金銭を支払うことができない場合がある。最悪の場合、相続人の固有財産を売却して金銭を調達する必要に迫られるおそれも考えられる。
かかる状況にある受遺者・受贈者を保護するため、裁判所による期限許与の制度を新設した。
裁判所が期限を許与した場合、金銭債務の弁済期が遡及的に変更されたことになる。
(2)手続
① 遺留分権利者が遺留分相当額の支払いを求めて訴訟提起している場合
独立に訴訟(別訴、反訴)を提起する必要があるが、抗弁として主張すれば足りるかについて、解釈に委ねられている。
② 遺留分権利者が遺留分相当額の支払いを求めているが、訴訟提起までしていない場合
受遺者・受贈者が遺留分権利者を被告として訴えを提起して、期限の許与を求める(形成の訴え)。

〇 民法1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)(平成30年改正)
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。 相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

□ 旧1042条(減殺請求権の期間の制限)
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

1 遺留分侵害額請求権の構造
形成権 + 金銭債権(民法1046条)

新1048条は、形成権の行使期間を定めたものである。
形成権は、遺留分減殺請求権(旧法)と同じく、行使上の一身専属権である。
「遺留分侵害額の請求権」=<相当>=「減殺の請求権」

2 遺留分侵害額請求権(形成権)行使によって生じた金銭債権は、
(1)期限の定めのない債権である。
遺留分権利者が受遺者等に対し具体的な金額を示して、その履行を請求した時点で、履行遅滞となる(民法412条3項)。
(2)通常の金銭債権と同様に消滅時効(旧166条1項・167条1項、新166条1項)にかかる。

〇 民法1049条(遺留分の放棄)
1項 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2項 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

【参考・参照文献】
このページは、以下の文献を参考・参照して作成しました。
① 日本弁護士連合会編 Q&A 改正相続法のポイント-改正経緯を踏まえた実務の視点-(平成30年、新日本法規)229頁
② 中込一洋著 実務解説 改正相続法(令和元年、弘文堂)162頁
③ 片岡武・管野眞一著 改正相続法と家庭裁判所の実務(2019年、日本加除出版)233頁
④ 堂薗幹一郎・野口宣大編著一問一答・新しい相続法(第2版)(商事法務、2020年)122頁
⑤ 松岡久和・中田邦博編 新・コンメンタール民法(家族法)(2021年、日本評論社)451頁(川淳一)

 

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