遺言書保管法

遺言書保管法

平成三十年法律第七十三号
法務局における遺言書の保管等に関する法律

1 平成30年(2018年)の相続法改正で、遺言書保管制度が新設された。これは、自筆証書遺言を法務局において保管するもので、「誰でも作成し易い」というプラス面はあるが「紛失や偽造・改ざんのおそれ」というマイナス面がある自筆証書遺言について、マイナス面をなくし、自筆証書遺言の利用促進を図るものである。
2 遺言書保管所に保管されている遺言書は、家庭裁判所での検認手続が不要である(本法11条)。
3 令和2年(2020年)7月10日施行

〇 第1条(趣旨)
この法律は、法務局(法務局の支局及び出張所、法務局の支局の出張所並びに地方法務局及びその支局並びにこれらの出張所を含む。次条第一項において同じ。)における遺言書(民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百六十八条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう。以下同じ。)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。

対象となる遺言は、自筆証書遺言(民法968条)である。

〇 第2条(遺言書保管所)
1項 遺言書の保管に関する事務は、法務大臣の指定する法務局が、遺言書保管所としてつかさどる。
2項 前項の指定は、告示してしなければならない。

1 本法施行時、全国で312箇所の法務局が遺言書保管所に指定されている。
2 遺言書保管所として指定されたのは、おおむね本局及び支局で、東京法務局においては、それに加え、板橋出張所が指定されている。

〇 第3条(遺言書保管官)
遺言書保管所における事務は、遺言書保管官(遺言書保管所に勤務する法務事務官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が取り扱う。

〇 第4条(遺言書の保管の申請)
1項 遺言者は、遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請をすることができる。
2項 前項の遺言書は、法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならない。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言書の様式)
第9条 法第4条第2項の法務省令で定める様式は、別記第一号様式によるものとする。

3項 第一項の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合にあっては、当該他の遺言書が保管されている遺言書保管所)の遺言書保管官に対してしなければならない。
4項 第一項の申請をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、遺言書に添えて、次に掲げる事項を記載した申請書を遺言書保管官に提出しなければならない。
一 遺言書に記載されている作成の年月日
二 遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
三 遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
イ 受遺者
ロ 民法第1006条第1項の規定により指定された遺言執行者
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言書の保管の申請書の様式)
第10条 法第4条第4項の申請書は、別記第二号様式によるものとする。

(遺言書の保管の申請書の記載事項)
第11条
1項 法第4条第4項第4号の法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 遺言者の戸籍の筆頭に記載された者の氏名
二 遺言者の電話番号その他の連絡先
三 申請をする遺言書保管官の所属する遺言書保管所が遺言者の住所地及び本籍地を管轄しないとき(次号の場合を除く。)は、遺言者が所有する不動産の所在地(当該遺言書保管所が管轄するものに限る。)
四 遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されているときは、その旨
五 遺言書に法第九条第一項第二号(イを除く。)及び第三号(イを除く。)に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
六 遺言書の総ページ数
七 手数料の額
八 申請の年月日
九 遺言書保管所の表示

5項 前項の申請書には、同項第二号に掲げる事項を証明する書類その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言書の保管の申請書の添付書類)
第12条
1項 法第4条第5項の法務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
一 前条第1号に掲げる事項を証明する書類
二 遺言書が外国語により記載されているときは、日本語による翻訳文
2項 法第4条第5項に規定する同条第4項第2号に掲げる事項を証明する書類及び前項第1号に掲げる書類で官庁又は公署の作成したものは、その作成後3月以内のものに限る。

6項 遺言者が第一項の申請をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。

1 管轄1(本条3項)
① 遺言者の住所地若しくは本籍地
② 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

①②について
遺言者にとっての利便性(要出頭[本条6項]のため)、遺言者死亡後相続人等にとっての利便性などを考慮して、できる限り広く定められた。
②について
遺言者所有に係る不動産の所在地に管轄が認められているのは、相続登記の促進も視野に入れられている。

2 遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合(本条3項かっこ書)
→ 他の保管所での保管を認めると、相続人等の負担の増大、遺言書保管所の事務が複雑化する。
→ 当該他の遺言書が保管されている遺言書保管所に限る。
3 対象の自筆証書遺言の要件(本条2項)
① 法務省令で定める様式
保管や画像情報化の便宜のため
遺言書保管省令9条→別記第1号様式
② 封をしていないこと(無封)
(趣旨)文献①p215
遺言書保管官が行う下記業務のため。
a 遺言書が民法968条の定める方式に適合しているか否かについての外形的な確認
遺言書に記載されている日付の時点における遺言者の年齢が15歳に達しているか否かの確認も行われる(文献①p215、218)。
b 遺言書の作成者と申請人の同一性の確認
c 遺言書の画像情報の磁気ディスクをもって調製する遺言書保管所保管ファイルへの記録等
4 申請書(本条4項)
遺言書に添えて、必要事項を記載した申請書を提出する。

5 申請の却下
□ 法務局における遺言書の保管等に関する政令

(遺言書の保管の申請の却下)
第2条 遺言書保管官は、次の各号のいずれかに該当する場合には、理由を付した決定で、法第4条第1項の申請を却下しなければならない。
一 当該申請が遺言者以外の者によるものであるとき、又は申請人が遺言者であることの証明がないとき。
二 当該申請に係る遺言書が、法第1条に規定する遺言書でないとき、又は法第4条第2項に規定する様式に従って作成した無封のものでないとき。
三 当該申請が法第4条第3項に規定する遺言書保管官に対してされたものでないとき。
四 申請書が法第4条第4項に定めるところにより提出されなかったとき。
五 申請書に法第4条第5項に規定する書類を添付しないとき。
六 法第4条第6項の規定に違反して、遺言者が出頭しないとき。
七 申請書又はその添付書類の記載が当該申請書の添付書類又は当該申請に係る遺言書の記載と抵触するとき。
八 法第12条第1項の手数料を納付しないとき。

6 本人出頭主義(本条6項、法5条)
(1)趣旨(文献①224頁)
a、bを防止する。

a真正に成立しない遺言書の保管が申請されること
b遺言者の意思に反して遺言書の保管が申請されること

(2)確認事項
① 本人確認 法5条
② 同一性

a=b=c
a 遺言書に記載された遺言者
b 申請書に記載された遺言者
c 出頭した遺言者

(3)本人出頭主義が満たされない場合
申請は却下される。遺言書保管政令2条1号・6号

〇 民法968条(自筆証書遺言)(平成30年改正)

1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

〇 第5条(遺言書保管官による本人確認)
遺言書保管官は、前条第一項の申請があった場合において、申請人に対し、法務省令で定めるところにより、当該申請人が本人であるかどうかの確認をするため、当該申請人を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す書類の提示若しくは提出又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言書保管官による本人確認の方法)
第13条 法第5条(法第6条第4項及び第8条第3項、令第4条第4項及び第10条第6項並びに第19条第3項において準用する場合を含む。次条において同じ。)の規定による提示若しくは提出又は説明は、次のいずれかの方法によるものとする。
一 個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)、運転免許証(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項に規定する運転免許証をいう。)、運転経歴証明書(同法第百四条の四第五項(同法第百五条第二項において準用する場合を含む。)に規定する運転経歴証明書をいう。)、旅券等(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に規定する旅券及び同条第六号に規定する乗員手帳をいう。ただし、書類の提示を行う者の氏名及び出生の年月日の記載があるものに限る。)、在留カード(同法第十九条の三に規定する在留カードをいう。)又は特別永住者証明書(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)第七条に規定する特別永住者証明書をいう。)を提示する方法
二 前号に掲げるもののほか、官公署から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類(氏名及び出生の年月日又は住所の記載があり、本人の写真が貼付されたものに限る。)であって、当該書類の提示を行う者が本人であることを確認することができるものとして遺言書保管官が適当と認めるものを提示する方法

(申請人を特定するために必要な事項)
第14条 法第五条の法務省令で定める事項は、氏名及び出生の年月日又は住所とする。

申請人→(遺言書保管官に求めに応じて)<提示>→遺言書保管官

本人特定事項(氏名及び生年月日又は住所)

← 本人の写真が貼付された官公署の書類である個人番号カード、運転免許証、旅券等

〇 第6条(遺言書の保管等)
1項 遺言書の保管は、遺言書保管官が遺言書保管所の施設内において行う。
2項 遺言者は、その申請に係る遺言書が保管されている遺言書保管所(第四項及び第八条において「特定遺言書保管所」という。)の遺言書保管官に対し、いつでも当該遺言書の閲覧を請求することができる。
3項 前項の請求をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
4項 遺言者が第二項の請求をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、前条の規定を準用する。
5項 遺言書保管官は、第一項の規定による遺言書の保管をする場合において、遺言者の死亡の日(遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、これに相当する日として政令で定める日)から相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間が経過した後は、これを廃棄することができる。

1 遺言書の保管開始時、遺言書保管官の遺言者に対する保管証の交付(文献①226頁)
① 保管番号
遺言書毎に付される番号であり、これだけで当該遺言書を特定できる。
② 遺言者は、保管証を利用することにより、遺言の内容の秘密を保持したまま、遺言書を遺言書保管所に保存していることを相続人等に伝えることができる。
③ 保管証は、たとえ紛失した場合であっても、再発行されることはない。
④ 保管証交付後に保管申請が撤回された場合等、保管証があるからといって、遺言書が遺言書保管所に保管されているとは限らない。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(保管証)
第15条
1項 遺言書保管官は、法第4条第1項の申請に基づいて遺言書の保管を開始したときは、遺言者に対し、保管証を交付しなければならない。
2項 前項の保管証は、別記第三号様式により、次に掲げる事項を記録して作成するものとする。
一 遺言者の氏名及び出生の年月日
二 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号

(保管証の送付の請求)
第16条
1項 遺言者は、送付に要する費用を納付して、前条第1項の保管証の送付を請求することができる。
2項 前項の場合における保管証の送付は、遺言者の住所に宛てて、郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)によってするものとする。

(保管証の交付を要しない場合)
第17条 遺言書保管官は、遺言者が、法第4条第1項の申請に基づいて遺言書の保管を開始した時から三月を経過しても保管証を受領しないときは、第15条第1項の規定にかかわらず、遺言者に対し、保管証を交付することを要しない。この場合においては、同条第2項の規定により作成した保管証を廃棄することができる。

2 遺言書保管所における遺言書及び遺言書情報の保管期間
(法6条5項、法7条3項)

□ 法務局における遺言書の保管等に関する政令

(遺言書の保管期間等)
第五条 法第六条第五項(法第七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める日は、遺言者の出生の日から起算して百二十年を経過した日とする。
2 法第六条第五項の政令で定める期間は五十年とし、法第七条第三項において準用する法第六条第五項の政令で定める期間は百五十年とする。

保存開始→遺言書の死亡→保存継続→保存期間満了
(遺言書)  遺言者死亡日(※1)から50年 ※2
(遺言書情報)遺言者死亡日(※1)から150年 ※2

※1 遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、これに相当する日として政令で定める日=遺言者の出生日から120年を経過した日
※2 保存期間満了後、遺言書は廃棄、遺言書情報は消去され得る。

3 遺言者が死亡すると、遺言書保管所に保管されている遺言書は、相続人であっても、その返還を請求できない。(文献①228頁)。
4 遺言者の生存中、遺言書の内容の確認
(法6条2項~4項)

□ 法務局における遺言書の保管等に関する政令

(遺言者による遺言書保管ファイルの記録の閲覧)
第4条
1項 遺言者は、遺言書保管官に対し、いつでも、法第4条第1項の申請に係る遺言書に係る遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求をすることができる。
2項 前項の請求は、特定遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3項 第1項の請求をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
4項 遺言者が第1項の請求をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、法第五条の規定を準用する。
5項 法第12条第1項(第2号に係る部分に限る。)及び第2項の規定は、第1項の閲覧を請求する者について準用する。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言者による遺言書保管ファイルの記録の閲覧の方法)
第24条
1項 令第4条第1項の法務省令で定める方法は、遺言書保管ファイルに記録されている次に掲げる事項を出力装置の映像面に表示する方法とする。
一 法第7条第2項各号に掲げる事項
二 第11条第1号及び第5号に掲げる事項
2項 第22条の規定は、令第4条第1項の規定による遺言書保管ファイルの記録の閲覧について準用する。

(1)遺言書=プライバシー性の高い情報
→機密性を保持する必要性が高い。
(2)閲覧するこどができる者
① 遺言者(生存中)   可
② 遺言者の推定相続人等 不可
(3)方法
① 遺言書
閲覧 法6条2項
遺言者本人出頭主義 法6条4項前段

遺言書が保管されている遺言書保管所
(特定遺言書保管所) 法6条2項
② 遺言書保管ファイルの記録
閲覧 政令4条1項
遺言者本人出頭主義 政令4条4項前段
遺言書が保管されている遺言書保管所
(特定遺言書保管所)+それ以外の遺言書保管所
政令4条1項2項、省令24条1項
③ 手続

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言者による遺言書の閲覧の請求の方式)
第21条
1項 法第6条第3項の請求書は、別記第四号様式によるものとする。
2項 前項の請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 法第4条第4項第2号に掲げる事項及び第11条第2号に掲げる事項
二 手数料の額
三 請求の年月日
四 遺言書保管所の表示

(遺言者による遺言書の閲覧の方法)
第22条
法第6条第2項の規定による遺言書の閲覧は、遺言書保管官又はその指定する職員の面前でさせるものとする。

(遺言者による遺言書保管ファイルの記録の閲覧の請求の方式)
第23条
第21条の規定は、令第4条第3項の請求書について準用する。

〇 第7条(遺言書に係る情報の管理)
1項 遺言書保管官は、前条第一項の規定により保管する遺言書について、次項に定めるところにより、当該遺言書に係る情報の管理をしなければならない。
2項 遺言書に係る情報の管理は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製する遺言書保管ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。
一 遺言書の画像情報
二 第四条第四項第一号から第三号までに掲げる事項
三 遺言書の保管を開始した年月日
四 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
3項 前条第五項の規定は、前項の規定による遺言書に係る情報の管理について準用する。この場合において、同条第五項中「廃棄する」とあるのは、「消去する」と読み替えるものとする。

1 遺言書の原本の保管
遺言書保管所の施設内において(法6条1項)、遺言書の滅失又は毀損の防止等遺言書の適切な保管のために必要な措置を講じて保管される(遺言書保管事務取扱手続準則6条)。

文献①227頁は、施錠可能な書棚を例としてあげる。

2 遺言書保管ファイル記録事項
法7条2項
① 遺言書の画像情報
② 第4第4項第1号から第3号までに掲げる事項
ⅰ 遺言書に記載されている作成の年月日
ⅱ 遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
ⅲ 遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
イ 受遺者
ロ 民法第1006条第1項の規定により指定された遺言執行者
③ 遺言書の保管を開始した年月日
④ 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
③ 遺言書の保管を開始した年月日
④ 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
⑤ 遺言書保管省令によるもの

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

第20条 遺言書保管官は、遺言書に係る情報の管理をするには、第11条第1号及び第5号に掲げる事項をも遺言書保管ファイルに記録しなければならない。

〇 第8条(遺言書の保管の申請の撤回)
1項  遺言者は、特定遺言書保管所の遺言書保管官に対し、いつでも、第四条第一項の申請を撤回することができる。
2項 前項の撤回をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した撤回書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
3項 遺言者が第一項の撤回をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、第五条の規定を準用する。
4項 遺言書保管官は、遺言者が第一項の撤回をしたときは、遅滞なく、当該遺言者に第六条第一項の規定により保管している遺言書を返還するとともに、前条第二項の規定により管理している当該遺言書に係る情報を消去しなければならない。

1 意義
遺言書の保管の申請の撤回は、遺言者の生存中、遺言者のみができる。(文献①229頁)
法8条は、遺言書の保管の申請を撤回する方式、すなわち撤回書の様式、記載事項、添付書類等を規定したものである。

2 関連する遺言書保管省令は、次のとおりである。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令

(遺言書の保管の申請の撤回の方式)
第25条
1項 法第8条第2項の撤回書は、別記第五号様式によるものとする。
2項 前項の撤回書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 法第4条第4項第2号に掲げる事項及び第11条第2号に掲げる事項
二 撤回の年月日
三 遺言書保管所の表示

(遺言書の保管の申請の撤回書の添付書類)
第26条 法第4条第4項第2号に掲げる事項に変更がある場合(令第3条第1項の規定により当該変更に係る届出がされている場合を除く。)における法第8条第2項の法務省令で定める書類は、当該変更を証明する書類とする。

(遺言書等の返還の手続)
第27条
1項 遺言書保管官は、法第8条第4項の規定により遺言書を遺言者に返還するときは、当該遺言書を受領した旨を記載した受領書と引換えに返還するものとする。
2項 遺言書保管官は、第12条第1項第2号の翻訳文を保存している場合において、法第8条第4項の規定により遺言書を遺言者に返還するときは、当該翻訳文についても当該遺言者に返還するものとする。この場合においては、前項の規定を準用する。

3 法8条3項は遺言者本人出頭主義を定めたものである。申請の場合と同様、本人確認書類の提示が必要である(法8条3項後段が法5条を準用する。)。
4 遺言書保管官の遺言者に対する遺言書の返還は、遺言者の遺言書保管官に対する受領証の交付の引換えになされる(省令27条)。
5 保管の申請を撤回しても、遺言者に返還された遺言書の効力に影響を及ぼさない。返還された遺言書は、家庭裁判所の検認の対象となる。(文献①229頁)

〇 第9条(遺言書情報証明書の交付等)
1項 次に掲げる者(以下この条において「関係相続人等」という。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている遺言書(その遺言者が死亡している場合に限る。)について、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面(第五項及び第十二条第一項第三号において「遺言書情報証明書」という。)の交付を請求することができる。
一 当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人(民法第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。以下この条において同じ。)
二 前号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者又はその相続人(ロに規定する母の相続人の場合にあっては、ロに規定する胎内に在る子に限る。)
イ 第四条第四項第三号イに掲げる者
ロ 民法第七百八十一条第二項の規定により認知するものとされた子(胎内に在る子にあっては、その母)
ハ 民法第八百九十三条の規定により廃除する意思を表示された推定相続人(同法第八百九十二条に規定する推定相続人をいう。以下このハにおいて同じ。)又は同法第八百九十四条第二項において準用する同法第八百九十三条の規定により廃除を取り消す意思を表示された推定相続人
ニ 民法第八百九十七条第一項ただし書の規定により指定された祖先の祭祀し を主宰すべき者
ホ 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)第十七条の五第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者又は地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)第三十七条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
ヘ 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受益者となるべき者として指定された者若しくは残余財産の帰属すべき者となるべき者として指定された者又は同法第八十九条第二項の規定による受益者指定権等の行使により受益者となるべき者
ト 保険法(平成二十年法律第五十六号)第四十四条第一項又は第七十三条第一項の規定による保険金受取人の変更により保険金受取人となるべき者
チ イからトまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
三 前二号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者
イ 第四条第四項第三号ロに掲げる者
ロ 民法第八百三十条第一項の財産について指定された管理者
ハ 民法第八百三十九条第一項の規定により指定された未成年後見人又は同法第848条の規定により指定された未成年後見監督人
ニ 民法第902条第1項の規定により共同相続人の相続分を定めることを委託された第三者、同法第908条の規定により遺産の分割の方法を定めることを委託された第三者又は同法第1006条第1項の規定により遺言執行者の指定を委託された第三者
ホ 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第七十五条第二項の規定により同条第一項の登録について指定を受けた者又は同法第百十六条第三項の規定により同条第一項の請求について指定を受けた者
ヘ 信託法第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受託者となるべき者、信託管理人となるべき者、信託監督人となるべき者又は受益者代理人となるべき者として指定された者
ト イからヘまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
2項 前項の請求は、自己が関係相続人等に該当する遺言書(以下この条及び次条第一項において「関係遺言書」という。)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3項 関係相続人等は、関係遺言書を保管する遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該関係遺言書の閲覧を請求することができる。
4項 第一項又は前項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
5項 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人並びに当該関係遺言書に係る第4条第4項第3号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

□ 法務局における遺言書の保管等に関する政令
(関係相続人等による遺言書保管ファイルの記録の閲覧)
9条
4項 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書保管ファイルに記録された事項を表示したものの閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人(民法(明治二十九年法律第八十九号)第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。次条において同じ。)並びに当該関係遺言書に係る法第4条第4項第3号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

◇ 法務局における遺言書の保管等に関する省令
(関係遺言書保管通知)
第48条
1項 遺言書保管官は、法第9条第5項本文の場合又は令第9条第4項本文の場合には、速やかに、関係遺言書を保管している旨を当該関係遺言書に記載された法第9条第1項第2号(イを除く。)及び第3号(イを除く。)に掲げる者にも通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
2項 法第9条第5項、令第9条第4項及び前項の通知は、関係遺言書を現に保管する遺言書保管所の遺言書保管官が、郵便又は信書便により書面を送付する方法により行うものとする。
3項 前項の遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官は、法第9条第1項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は令第9条第1項の請求により遺言書保管ファイルに記録された事項を表示したものの閲覧をさせたときは、遅滞なく、その旨を前項の遺言書保管所に通知しなければならない。

1 遺言者の相続人等(相続人、受遺者、遺言執行者等)は、どのようにして、遺言書保管所に保管されている遺言書の存在及び内容を知ることができるのか。(文献①237頁)
2 遺言者の生前
遺言者から(遺言者の生存中に)知らされる。
3 遺言者の死亡後
① 保管証(省令15条)から知る。
② 遺言書保管事実証明書の交付請求(法10条1項)
③ 遺言書の閲覧(法10条3項)
④ 遺言書保管官による通知(本条5項)→4
⑤ 遺言書保管事務取扱手続準則(民事局長通達)19条、35条1項→5
4 遺言書保管官による通知
(1)場合
本条1項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は本条3項の請求により関係遺言書の閲覧をさせた場合
(2)通知事項
関係遺言書を保管している旨
(3)通知対象者
① 遺言書情報証明書の交付を受け、又は遺言書等の閲覧をした者以外の相続人
② 遺言書に記載された法9条2号・3号に掲げる者
(受遺者、遺言執行者等)

(例外)
関係相続人等が既に、関係遺言書が遺言書保管所に保管されていることを知っている場合

※ 関係遺言書の意義(文献①238頁)
自己が関係相続人等(遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等本条1項各号の者)に該当する遺言書(本条2項)
5 遺言書保管事務取扱手続準則(民事局長通達)19条、35条1項に基づく、遺言書保管官の関係相続人等に対する遺言書保管の通知(文献①239頁)
(1)場合
① 遺言者が遺言書保管の申請をする時、遺言者の死亡時に遺言者が指定する者(※)に対し、遺言書を保管している旨の通知をすることの申出をしていた場合
② 遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認したとき
→ 遺言書を保管している旨通知

※ 次の者のうち一人に限られる。
① 遺言者の推定相続人
② 保管申請に係る遺言書に記載された法9条1項2号・3号に掲げる者(受遺者等、遺言執行者等)

(2)趣旨
遺言書が遺言書保管所に保管されていることを相続人等に知らせることによって、相続をめぐる紛争を防止する。法9条5項本文に基づく通知を保管する。
(3)手続
① 申出書に所定事項を記載
② 遺言書保管官は、申出書の記載事項を遺言書保管ファイルに付記する。
〇 第10条(遺言書保管事実証明書の交付)
1項 何人も、遺言書保管官に対し、遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無並びに当該関係遺言書が保管されている場合には遺言書保管ファイルに記録されている第七条第二項第二号(第四条第四項第一号に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる事項を証明した書面(第十二条第一項第三号において「遺言書保管事実証明書」という。)の交付を請求することができる。
2項 前条第二項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。

〇 第11条(遺言書の検認の適用除外)
民法第1004条第1項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

遺言書保管所に保管される遺言書は、遺言書保管官が厳重に保管することから、偽造・変造等のおそれがなく、保存が確実であるため、公正証書遺言と同様、家庭裁判所の検認は不要である。

〇 第12条(手数料)
1項 次の各号に掲げる者は、物価の状況のほか、当該各号に定める事務に要する実費を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
一 遺言書の保管の申請をする者
遺言書の保管及び遺言書に係る情報の管理に関する事務
二 遺言書の閲覧を請求する者
遺言書の閲覧及びそのための体制の整備に関する事務
三 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する者
遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付及びそのための体制の整備に関する事務
2項 前項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。

1 法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令(令和2年政令第55号)によると、各種手続の手数料は次のとおりである。(文献①255頁、311頁)
① 遺言書の保管の申請をする者
1件につき3,900円
② 遺言書の閲覧を請求する者
1回につき1,700円
③ 遺言書保管ファイルの記録の閲覧を請求する者
1回につき、1,400円
④ 遺言書情報証明書の交付を請求する者
1通につき1,400円
⑤ 遺言書保管事実証明書の交付を請求する者
1通につき800円
⑥ 遺言書保管政令10条1項に規定する申請書等 又は
同条2項に規定する撤回書等の閲覧を請求する者
一の申請に関する申請書等 又は
一の撤回に関する撤回書等 につき 1,700円

〇 第13条(行政手続法の適用除外)
遺言書保管官の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章の規定は、適用しない。

〇 第14条(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用除外)
遺言書保管所に保管されている遺言書及び遺言書保管ファイルについては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。

〇 第15条(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の適用除外)
遺言書保管所に保管されている遺言書及び遺言書保管ファイルに記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第五項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。

〇 16条(審査請求)
1項 遺言書保管官の処分に不服がある者又は遺言書保管官の不作為に係る処分を申請した者は、監督法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができる。
2項 審査請求をするには、遺言書保管官に審査請求書を提出しなければならない。
3項 遺言書保管官は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、相当の処分をしなければならない。
4項 遺言書保管官は、前項に規定する場合を除き、三日以内に、意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。この場合において、監督法務局又は地方法務局の長は、当該意見を行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第十一条第二項に規定する審理員に送付するものとする。
5項 法務局又は地方法務局の長は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、遺言書保管官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか利害関係人に通知しなければならない。
6項 法務局又は地方法務局の長は、審査請求に係る不作為に係る処分についての申請を却下すべきものと認めるときは、遺言書保管官に当該申請を却下する処分を命じなければならない。
7項 第一項の審査請求に関する行政不服審査法の規定の適用については、同法第二十九条第五項中「処分庁等」とあるのは「審査庁」と、「弁明書の提出」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)第十六条第四項に規定する意見の送付」と、同法第三十条第一項中「弁明書」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律第十六条第四項の意見」とする。

〇 第17条(行政不服審査法の適用除外)
行政不服審査法第十三条、第十五条第六項、第十八条、第二十一条、第二十五条第二項から第七項まで、第二十九条第一項から第四項まで、第三十一条、第三十七条、第四十五条第三項、第四十六条、第四十七条、第四十九条第三項(審査請求に係る不作為が違法又は不当である旨の宣言に係る部分を除く。)から第五項まで及び第五十二条の規定は、前条第一項の審査請求については、適用しない。

〇 第18条(政令への委任)
この法律に定めるもののほか、遺言書保管所における遺言書の保管及び情報の管理に関し必要な事項は、政令で定める。

【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 堂薗幹一郎・野口宣大編著 一問一答・新しい相続法(第2版)(2020年、商事法務)209頁
③ 潮見佳男編著・民法(相続関係)改正法の概要(2019年、金融財政事情研究会) 157頁

 

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