所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度

所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度

 

民法第2編
第3章 所有権
第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

第1 新しい財産管理制度の創設

(文献①Q59・166頁)

1 これまでの財産管理制度

所有者を特定することができない、又は所有者が所在不明である、土地・建物を管理する制度として、

① 不在者財産管理制度 民法25条1項

② 相続財産管理制度 民法952条1項

③ その他

当該土地建物だけでなく、不在者等の他の財産や他の相続財産全般を管理する制度

→ 問題点

① 予納金の額が高額となる。

② 不明者毎に管理人を選任する必要があり、コストがかさむ。

③ 所有者を全く特定できない場合は、制度を利用できない。

2 新しい財産管理制度の創設

所有者又はその所在を知ることができない土地・建物について、効率的かつ適切な管理を実現し、ひいては、その円滑・適切な利用を図るため、個々の土地・建物のみに特化して管理する「所有者不明土地管理制度」及び「所有者不明建物管理制度」を創設した。

 

第2 所有者不明土地管理制度

(所有者不明土地管理命令)
○ 第264条の2                                       1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。
2項 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。
3項 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4項 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

1 所有者不明土地管理命令の要件(文献①Q60・168頁)

【要件1】

所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地

土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分

共有持分が遺産共有である場合も含まれる(文献①Q65・181頁)。

 複数の共有者が不特定又は所在不明である場合には、複数の不明共有者の共有持分の総体を対象として一人の所有者不明土地管理人を選任することが可能である(文献①Q65・181頁)。この場合について、民法246条の5・2項の義務

<例>自然人が登記名義人である土地:不動産登記簿及び住民票上の住所等を調査しても、その所在が明らかでないケース、当該自然人は死亡しているが、その相続人の存否が不明であるケース

【要件2】必要性

土地の管理状況等に照らし、所有者不明土地管理人による管理を命ずることが必要かつ相当であるとき

<例>必要:所有者不明土地を誰も管理していないとき/相当でないとき:申立人が裁判所から求められた予納金を納付しないとき

2 利害関係人の意義(文献①Q62・172頁)

所有者不明土地管理命令を申し立てることができる「利害関係人」とは、対象土地の管理について利害関係を有する者

<例>

・ 土地が適切に管理されないために不利益を被るおそれがある隣接地所有者

・ 土地の共有者の一部が不特定又は所在不明である場合の他の共有者

・ 土地を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者

・(時効取得等により)土地の所有権の移転の登記を求める権利を有する者

所有者不明土地特措法38条の特例:利害関係は不要 

 所有者不明土地問題の解消という制度目的に照らして、土地の利用・取得の機会を広く開くため、土地を利用・取得しようとする者も利害関係人に含め、裁判所が利用・取得の目的、土地の現況、所有者による管理の回復が見込まれる程度等に照らして、命令の必要性を判断することが適当である(文献②(下)51頁。)。

3 価値転化物に対する所有者不明土地管理制度の意義

文献①Q61・170頁

4 所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ範囲(本条2項)(文献①176頁)

① 所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分

② ①の土地上にある動産で、「土地所有者又は共有者が所有する」動産(文献①176注2)

5 所有者不明土地管理命令の裁判(文献①Q67・186頁)

(1)下記①~③の告知

(趣旨)所有者不明土地の所有者の所在を探索 + 所有者不明土地の所有者に対する手続保障

① 所有者不明土地管理命令の申立てが、その対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

② 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は、一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

③ ②の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

(2)所有者不明土地管理命令の裁判の告知

① 被告知者 申立人、所有者不明土地管理人 

  なお、所有者不明土地等の所有者に対する告知は不要である。

② 所有者不明土地管理命令の効力は、所有者不明土地管理人に告知することによって、生ずる。

③ 所有者不明土地管理命令は、不動産登記に公示される。

  裁判所書記官が登記の嘱託をする。

 

(所有者不明土地管理人の権限)
○ 第264条の3                                       1項 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
2項 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一 保存行為
二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 

(文献①Q63・174頁)

1 所有者不明土地管理人の管理処分権

(1)対象となる財産

① 所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分

② 所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産

③ ①②の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産

(2)管理処分権は所有者不明土地管理人に専属する(本条3項)。

(理由)

① 所有者不明土地管理人による職務の円滑な遂行を可能とするため。

② 所在等が不明な所有者が自ら管理処分権を行使することは現実には考えられない。

2 所有者不明土地管理人の権限の範囲

(1)裁判所の許可不要行為

所有者不明土地管理人による円滑な職務執行を図る。

① 保存行為(本条2項1号)

② 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為(本条2項2号)

(2)裁判所の要許可行為(本条2項本文)

所有者の財産状態に与える影響に配慮

(1)①②を超える行為=変更、処分<例>土地の売却

裁判所の要許可行為であるにもかかわらず、裁判所の許可を得ないでした行為の効力

土地所有者に対して効力を生じない。

取引の安全 → 善意の第三者に対抗不可(本条2項ただし書)

3 土地の共有持分に係る所有者不明土地管理人の権限

(文献①Q65・181頁)

(1)基本的には、2と同じである。

(2)(1)を前提として、

① 所有者不明土地管理人が、自ら共有物に変更を加え、又は管理に関する事項を行う場合は、共有の規定にしたがい、他の共有者の同意が必要となる。

② 所有者不明土地管理人が管理処分権を有する。

→ 共有物に変更を加えること及び管理に関する事項について同意することができる(民法251条、252条)。但し、本条2項の規制に服する。

 

(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)                   ○ 第264条の4                                      所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

(所有者不明土地管理人の義務)
○ 第264条の5                                      1項 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。
2項 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

1 本条の意義

  本条は、所有者不明土地管理人の義務を定めたものである(文献①Q63・176頁)。

2 本条1項

所有者不明土地管理人:他人の所有する土地を適切に管理することを職務とする

→ 「土地所有者の利益」を害しないよう権限を行使すべき。

→ 土地所有者(共有持分を有する者)を相手方にして、善良な管理者の注意義務を負う。

※ 土地の所有者以外の利害関係人との関係では、本条1項の善管注意義務を負わず、(要件を満たす場合)一般的な不法行為責任を負うにとどまる。

3 本条2項

数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発令された場合、所有者不明土地管理が特定の共有者の利益を犠牲にして、他の共有者の利益を図ることを禁ずる趣旨である。

 

(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)
○ 第264条の6                                         1項 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。
2項 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

1 本条の意義

 所有者不明土地管理人の解任・辞任を規定したものである(文献①Q66・184頁)。

2 解任

(1)実体要件

 その任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるとき

(2)手続要件

① 利害関係人の請求 

② 裁判所の解任

3 辞任

(1)実体要件

 正当な事由があるとき

(2)手続要件

 裁判所の許可

 

□ 管理の終了(文献②(下)51頁)

 管理人による管理は、裁判所の命令の取消しによって終了する。

① 所有者が現れて、命令対象土地がその者の所有に属することを証明した場合 

② 管理人が管理すべき財産がなくなった場合 

 管理人が裁判所の許可を得て土地を売却したうえ売却代金を供託した場合は、これに当たる。 

③ その他、管理人が財産の管理を継続することが相当でなくなった場合

 

 

 

 

(所有者不明土地管理人の報酬等)
○ 第264条の7                                       1項 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2項 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

 本条は、所有者不明土地管理人の費用及び報酬について規定したものである。文献①Q66・184頁

 

 

第2 所有者不明建物管理制度

(所有者不明建物管理命令)
○ 第264条の8                                            1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。
2項 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
3項 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4項 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。
5項 第二百六十四条の三から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

1 所有者不明建物管理命令の意義

(文献①Q68・192頁)

 所有者不明土地管理命令の効力は、土地上の建物に及ばない。

+ 所有者不明建物を管理する必要性

→ 所有者不明「土地」管理命令とは別に、所有者不明「建物」管理命令を認めた。

2 所有者不明建物管理命令の規律

 基本的には、所有者不明土地管理命令と同じであり、実体的・手続的規定の多くが準用される。本条5項 → 264条の3~264条の7

3 所有者不明建物管理命令の効力

 建物の円滑な管理の観点から、対象建物の所有者・共有者が有する、建物の敷地利用権(例:賃借権)に及ぶ(本条2項)。

4 建物の敷地利用権の管理処分権

 所有者不明建物管理人に専属する。しかし、所有者不明建物管理人は、賃料の支払義務を負うことはない。もっとも、建物の管理の観点から必要があれば、賃料等の弁済をすることはできる。 

 

 

 

(参照・参考文献)

このページは、下記文献を基に作成しました。

① 村松秀樹・大谷太編著 Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法(2022年、きんざい)

② 佐久間毅 新法解説 民法等の一部を改正する法律・相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(上)(下)(法学教室495号59頁、460号50頁)

 

 

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