将来相続される側で気をつけるポイント
遺言書を作成しておく、その前提として資産や負債の状況を正確に把握しておく等です。
当事務所で過去取り扱った事案では、「被相続人が生前に遺言書を作成しておれば、相続人間で紛争にならなかったのに」と思うことがあります。
例えば、夫に前妻との間の子がおり、離婚後に再婚した場合、この状態で夫が死亡し相続が開始されると、遺言書がない場合、法定相続どおり遺産分割をすることになりますが、後妻の生活保障が十分とはいえない事態も起こり得ます。また、前妻の子と後妻との間で十分に協議ができないおそれもあります。
将来相続する側で気をつけるポイント
誰が相続人となるか把握しておく、遺言書を被相続人の生前預かった場合には大切に保管しておく等です。
被相続人が亡くなった後でも、きちんと話し合いをできるよう準備をしておくと、比較的スムーズに進められる場合があります。
相続で気をつけるポイント まとめ
将来相続される側と、将来相続する側とで、日頃、機会があれば、被相続人が死亡した後、被相続人の資産や負債はどうなるのか、相続人の生活はどうなるのか等について話す機会を持つことが大切だと考えております。
当事務所で主な取扱内容
遺産分割協議調停審判/遺言書作成・執行/遺留分侵害額請求など
相続人・遺言・遺産の調査
財産(資産・負債)を残される人(「被相続人」といいます。)が死亡し相続が開始した場合、以下の内容を調査する必要があります。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍事項証明書等を取り寄せる等して相続人は誰かの調査
・遺言の有無・内容、相続人の法定相続分(遺産分割をする際に基本となる相続分であり、民法900条に定められています。)等を調査
・法務局から登記事項証明書を取得したり銀行に照会する等して、被相続人の資産を調査
・事案によっては、被相続人の負債の有無・内容をCIC等の信用情報機関に照会する等して調査
相続が発生した場合、上記を速やかに調査しないと、その後の対応方法が異なり、相続手続きに問題が生じてしまう可能性があります。
相続が発生したら、まずは当事務所までご相談ください。
法定相続分
※昭和55年の民法(相続分)改正後
〇 配偶者は常に相続人となる。
〇 配偶者と子が相続人であるとき
配偶者 1/2 子 1/2
〇 配偶者と直系尊属が相続人であるとき
配偶者 2/3 直系尊属1/3
〇 配偶者と兄弟姉妹が相続人であるとき
配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4
遺言書作成
遺言書といっても、作成にはいくつかの方法があります。
当事務所では、ご相談者様の状況に応じて最善の作成方法をご提案いたします。
自筆証書遺言
作成には遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、押印することによって完成します。
特別なもの何も用意せず、簡単に作成できることから最も手軽に作成できる遺言書が自筆証書遺言ですが、書式を誤ってしまうと効力が失われてしまうので注意が必要です。
平成30年の民法(相続法)改正により、自書することが困難な者が容易に自筆証書遺言を作成することができるように、自筆要件が一部緩和され、相続財産の目録に限り、民法968条2項の定める手続を履践できれば、パソコンによる作成または不動産登記事項証明書・預貯金通帳等のコピーを添付等して、自筆に代用することができるようになりました。
また、平成30年の相続法改正で、遺言書保管制度が新設されました(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。これは、自筆証書遺言を法務大臣が指定する法務局において保管するもので、「誰でも作成し易い」というプラス面はあるが「紛失や偽造・改ざんのおそれ」というマイナス面がある自筆証書遺言について、マイナス面をなくし、自筆証書遺言の利用促進を図るものです。
自筆証書遺言は、自分で用意するので費用は特にかかりませんが、誤った書き方をしてしまい、法的な効力を持たなくなってしまうケースもあります。
気になる方は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
公正証書遺言
公証人が遺言者から内容を聴き取り作成する遺言を公正証書遺言といいます。
自筆証書遺言は、全文(原則として)、日付、氏名を自分で手書きする必要があり、また、訂正方法が複雑です。
また、作成したとしても、その後の保管や遺言者が死亡した後にきちんと発見してもらえるかという問題があり、また、改ざんが争われたり、そもそも遺言者自身が作成したのか、遺言能力はあったか等が争われることもあります。更に、遺言書の検認が必要です。
このようなことから、当事務所では、公正証書遺言をおすすめしております。
公正証書遺言であれば、法律専門家(もと裁判官・検察官等)である公証人により、法的に間違いがない表現で遺言書を作成してもらえます。
公証人が遺言者の本人確認をきちんと行い、遺言能力を確認するので、安心です(例外的に、公正証書遺言が無効になった例もあります)。
作成された遺言書の原本は公証役場で保管されますので、安心です。
また、遺言書の検認手続が不要です。遺言者が公証役場に行くのが原則ですが、病気・身体障害等のため公証役場まで行くことができない場合は、公証人が遺言者の住居所に出張してくれます。
公正証書遺言作成には、費用が掛かりますが、公証人の報酬は法律で決められております。
遺産分割
相続が発生した場合、遺言書の内容に従い、相続人又は受遺者が遺産を取得することになるのが原則です。
しかし、被相続人の遺言書がない場合、遺産分割をする必要があります。遺産分割とは、相続人のうち誰がどの遺産を取得するかを決めることをいいます。
遺産分割の手続
1:相続人間の協議(話し合い)を行い、遺産分割の割合の決定します。
2:協議が難しい場合、家庭裁判所での調停員を交えた協議をを行います。
3:家庭裁判所の審判により裁判所に決めてもらいます。
また、不動産が遺産の対象に含まれており、現物分割(不動産を物理的に分割する)が困難な場合、換価分割(不動産を第三者に売却したうえ売却代金を分割する)又は代償分割(相続人の一人が取得し、その者が自己の相続分を超える結果となる場合は、他の相続人に代償金を支払う)を選択するのが一般的です。
換価分割の場合で譲渡益がある場合は、譲渡益に対し課税されますので、注意が必要です。
相続放棄
相続とは被相続人の資産(預貯金、不動産、株式等)のみならず負債(借金、損害賠償債務等)を引き継ぐ制度です。
このため、被相続人に資産より負債が多い場合は、相続放棄の検討をおすすめしております。相続放棄をすれば、被相続人の資産も負債も引き継ぎません。
相続放棄の注意点
相続放棄は、家庭裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する)の手続ですが、自分のために相続開始があったことを知った時から3か月以内に手続をする必要があります。3か月内に被相続人の資産負債の調査が間に合わず相続するか相続放棄するか決断できない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を請求することが可能です。
相続放棄は、この期間を遵守することが最も大事です。
相続人が被相続人と音信不通の状態であれば、いつ相続が開始されたか分からず、被相続人の債権者から突然請求が来て初めて(この時点では相続開始後3か月を経過してしまっている)、自分が相続人であり相続が開始されことを初めて知ることもあります。
この場合には、相続開始後3か月を経過しておりますが、要件を充たすものとして相続放棄が認められる可能性がありますので、ご相談ください。
なお、家庭裁判所が相続放棄申述を受理しても、相続放棄が有効か無効かについて争われた場合は、最終的には、民事裁判で裁判所が結論を決めます。
また、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは原則として相続放棄できなくなるので注意が必要です。
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